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平成31年(2019年)1月31日更新

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日本人の「心の音」を届ける
和楽器組立工 三田村孝尚(みたむらよしひさ)さん(平成18年度受賞)

明治から続く和楽器専門店の3代目として、琴や琵琶(びわ)の製作を手がけてきた三田村孝尚さん。琴を中心に全工程を一貫して製作している。演奏会などで自らが仕立てた琴の音色が会場中に響き渡る時間は、大きな喜びを感じる場面だ。
乾燥させた桐(きり)から成る琴の胴体(甲羅)を鉋(かんな)で削る作業から三田村さんの琴製作は始まる。胴体部分の内側を削る際には、「ひとかんなひとかんな、鉋をかける回数によって音色が変わる」ため、材料の個性を見極める、長年の経験で培われた勘が物を言う。「材料に触れると手のひらに音が聞こえてくるような究極の領域を目指している」。続いて、綺麗な木目が浮き出てくるよう表面全体を焼きつける作業を終え、細かい装飾を施す。最後に行う調弦作業は腕の見せどころ。13本全ての弦から琴の優しい音色を生み出せるよう「1本1本魂を込めて弦を締めている」と。切れやすい絹に替わって現在はテトロン製の糸の使用が主流だが、「演奏家から『絹糸のような柔らかくてみやびな音が出る』と評されたことは一生の思い出」と話す。
大切にしているのは「全ての弦から良い音が出て、弾きやすい琴を製作すること」。「もうひと手間かけて、綺麗に仕上げる」という信念を常に持ち続け、人間国宝ら一流の演奏家たちと信頼関係を築いてきたと語る。
「歴史を途絶えさせてはいけない」との使命感から、伝統楽器の普及と後進の育成にも力を入れる。「琴の音色は日本人の心の音。多くの人に和楽器を身近に感じてほしい」。三田村さんの工房では、今日も日本人の心に響く音を創る手仕事が続いている。

■東京マイスターWEBサイト

三田村氏の写真
糸を締める鮮やかな手さばきには息をのむ

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