WEB広報東京都[平成23年8月号]
水道橋博士が語る東京の魅力 はかせのはなし

平成23年7月31日更新

身につけたい「言葉の力」

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 先日、ある番組で東京都副知事の猪瀬直樹さんにお会いしました。
 随分、久しぶりでしたが、猪瀬さんの新刊本の話から楽屋話は始まりました。
 作家同士の都知事と副知事の肝入りで、現在、東京都では「〈言葉の力〉再生プロジェクト」を立ち上げて、活字離れの実態や「言葉の力」を取り戻すプロジェクトを行っています。
 そんな中、副知事は『言葉の力』という新書を上梓じょうしされました。
 本書では、昨今の「活字離れ」に警鐘を鳴らし、元来、日本人が苦手とする「言語技術」について、その習得が急務だと主張しています。
 副知事も、作家として、風景を言語だけで映像として表現するために言語技術を磨いてきたといいます。言語力とは「情報を正確に理解したうえで、相手の表現の意図や背景を推論し、根拠を挙げて自分の意見を述べ、話し合って与えられた課題を解決できる力」であり、言語技術とは「言語によって相手に説明する技術で、伝えたいことを如何いかに相手に、効果的に、論理的に、伝えられるかという、コミュニケーションの基礎となる技術であり、国際ルールのようなもの」と説明しています。
 今の説明でわからなければ、僕の説明不足……原本を読んでください(笑)。
 欧米では当たり前に教えられるこの技術は、日本では教えられていないと副知事は問題視します。

 今回、被災者や首都圏の帰宅困難者の助けとなった twitterツイッターも、緊急時に140字以内で、的確に伝えたいことを表現できるかはまさに言語技術を普段から養っているかどうかにかかります。
 また、本書では「日本とヨーロッパのサッカーの差は言語技術の差」であり、コーチに怒られない為のプレーではなく、パスの一本一本について、選手個々人が自主的に判断し、そのパスにどういう狙いがあったのかを論理的に言葉で、味方に説明できる能力を身につけることがチームワークを構築し、勝因や敗因の分析にも役立つことを論じています。
 実際に、サッカーエリート教育機関のJFAアカデミー福島ではカリキュラムに、この言語技術やディベートの講義時間があるそうです。
 なんと、ここで講師をされている、日本の言語技術教育の第一人者である三森ゆりかさんは、2010年から東京都の新規採用職員の言語力研修にも講師として招かれています。研修の結果、「概要から詳細へ」という他人への説明の「型」を身につけた職員はすぐ都民に説明する際の応用ができたそうです。
 ならば、今後、僕たちも東京都の窓口などで接した時に、「言葉の力」効果が実感できるようになるでしょう。
 僕も、テレビタレントとして、日常でいくら面白い事件に巡り合っても、それをどう伝えれば視聴者に映像的イメージを喚起し、かつ面白くなるか、日々勉強中です。事件自体は大したことないのに、言語技術だけで爆笑話に変えてしまう同業者もいて舌を巻くこともしばしばです。
 副知事が調べたところ、一カ月に一冊も本を読まなかった都庁職員が12%おり、「少なからずショックを受けた」ことが今回の執筆のきっかけだったそうで、都庁職員のみならず、日本の若者全体に対する活字離れと、それが結果として、論理的説明能力を欠落させてしまうことを危惧しています。
 一筋縄ではいかない、言語技術を持った現役作家を上司としてツートップで頂く、都庁職員、そして都民のみなさん、もっともっと読書をして、たまには二人をギャフン!と言わせてみませんか?